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001: ちりめんモンスター現る

作:椎堂かおる

 
 仕事で疲れて帰ってくると、何を食べる気力もない。  それでも何か食べないと飢え死にしそうだ。  それはまずい。  そういう気持ちを引きずって、一人暮らしのワンルームの冷蔵庫を開けたら、卵が一個と、いつ買ったんだったかも憶えてない、ちりめんじゃこの袋があった。  とりあえず米は炊いてある。昨日からずっと、炊飯ジャーで保温したまんまのやつだ。  そろそろ端っこが乾いてカチカチになりかかった、生温いその白飯を茶碗に入れて、生卵と醤油をかけて、ちりめんじゃこをトッピングして食べることにした。  名付けて、ちりめんじゃこ乗せ卵かけご飯だ。  名付ける必要はなかった。  箸でかきまぜて、黙って一人でごはんを掻き込む。  うまい。ような気がする。よくわからない。とにかく飯は飯だ。  すごくうまい気がして、たぶん自分は腹が減っていたんだなと思った。  あと一口、二口のところまで食べてから、卵まみれの米粒の間に、何かがニョキッと生えてるのに気づいた。  ちりめんモンスターだ。  ちりめんじゃこはイワシの稚魚だが、イワシ以外のやつが、ついでに網にかかってしまい、イワシといっしょに乾燥させられて、ちりめんじゃこに混ざってしまったのが、ちりめんモンスターだ。  エビやカニの幼生や、タイやヒラメ、リュウグウノツカイの幼魚まで見つかることがあるらしい。  この茶碗に入ってたのは何だったんだろうな。  本当はイワシじゃないのに、イワシの中に混ざっちまって、本当は何なのかもわからないじゃないか?  食って大丈夫なのか、これ。そう思いながら、ぺろりと一膳平らげた。  ごちそうさま。  うまいかマズいかもわからないけど、たぶん、まあ、うまかったかな。
 
END.